日本経済新聞 社説要約 20170928

・政治の思惑ふきはらう政策論議

 

<要約>
 きょう28日、衆院が解散され、10月10日公示ー22日投票の総選挙に向け、政党も候補者も一斉に走り出す。
 この選挙では、まずは解散権を行使する安倍晋三首相の政治姿勢が問われ、政権への信任がテーマとなる。さらに首相が記者会見で表明したことなども争点となる。
解散をめぐっては、野党が安倍首相の諸問題を批判。首相は、消費税増税分の用途変更について、国民に信を問わなければならないと解散の理由を説明した。しかし、解散の理由には疑問が残る。
 又、東京都の小池百合子知事が代表となって「寛容な改革保守政党」を標榜する「希望の党」を旗揚げした。小池都知事が選挙戦に参入したことについて、共同代表ならともかく代表で選挙戦を戦う姿には違和感を禁じ得ない。さらに小池氏が示した方針についても、選挙での集票を意識した面はないのだろうか。なぜの疑問を解消してもらわないと困る。
 政治は権力闘争である。現実的に、政治の思惑が先行するのは当たり前だ。しかし、大義名分が必要なのはいうまでもない。

 

 今回の解散劇が突き付けた制度上のひとつの問題点は首相の解散権のあり方である。
前回14年の解散の際も、そして今回も争点がはっきりしないまま一気に解散に突き進んだ。
 解散権の制約は今後の憲法論議でもひとつのテーマである。

(本文1690字➡要約530字)

日本経済新聞 社説要約 20170913

安保理制裁の厳格履行で北に強い圧力を

<要約>
 6回目の核実験を強行した北朝鮮に対し、国連安全保障理事会が追加の制裁決議を全会一致で採決した。今回の制裁措置も加えると、北朝鮮の輸出による外貨収入の90%を
削減できるという。これで、核・ミサイル開発の資金源を断てば、危険な核の挑発に歯止めがかかるかもしれない。
 しかし、安保理決議の厳格な履行がなされなければ、なんの圧力にもならない。特に北朝鮮と深い関係のある中国・ロシアには履行を徹底してもらいたい。国際社会が協力し、制裁逃れを厳しく監視する必要がある。
 又、北朝鮮が決議に反発し、核・ミサイルの挑発を繰り返す恐れがある。日本政府は不測の事態に備え、万全の態勢を備えてほしい。
(本文920字➡要約290字)

 

 

対岸の火事ではない米気象災害

<要約>
 米国を強力なハリケーンが相次ぎ襲い、洪水や高波の被害が広がった。温暖化が進むと日本付近でもこうしたケースが増える可能性があり、対岸の火事では済まされない。
 実際、熱帯太平洋で発生し日本などに影響を与える台風も、近年強力なものが目立つ。
 気象研究で先頭を走る日米欧などの研究機関は協力して、温暖化によるハリケーンや台風の影響を調べてほしい。又、予報精度の向上も課題だ。
 さらに、研究と並行して各国政府は堤防の整備や避難計画の点検などを急ぐべきだ。
(本文770字➡要約220字)

日本経済新聞 社説要約 20170912

・TPP11テコに貿易自由化の好循環を

<要約>
 日中韓や東南アジア連合諸国(ASEAN)など16か国による東アジア地域包括的経済連携(RCEP)は、インドを含むアジア全域をほぼ対象とする巨大な自由貿易協定(FTA)である。日本はTPP11の効力に全力を挙げつつ、それをテコに質の高いRCEPの実現を各国に働きかけてほしい。
 現在16か国による交渉は遅れている。この時点で16か国による早期合意だけを優先すると、関税やルールで自由度の度合いの低い内容で妥協せざるを得なくなり、経済効果も大きくそがれてしまう。交渉は加速しなければならないが、まずは質の高い内容を優先すべきである。
 RCEPの交渉を後押しする最大のカギは、アメリカを除く「TPP11」だ。TPP11が発効すれば、韓国や台湾なども参加を検討する動きが強まろう。それが質の高いRCEPを促し、将来のアジア太平洋自由貿易圏の可能性を高める。

 そんな貿易自由化の好循環を作らねばならない。
(本文850字➡要約350字)

 

 

尖閣国有化5年で浮かぶ課題

<要約>
 日本政府が尖閣諸島を国有化して5年が過ぎた。反発した中国は周辺海域での公船の航行をなかば常態化させ、日中関係は緊張を帯びた状態が続いている。日本は海上保安庁の体制強化など備えを怠ってはならない。
 と同時に、北朝鮮の核・ミサイル開発や地球温暖化など、両国が連携すべき課題も多い。
 広い視野から「戦略的互恵」関係を具現化する知恵を、両首脳は問われている。
(本文760字➡要約220字)
※「戦略的互恵」関係…http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/china/visit/0805_ks.html

 

 

日本経済新聞 社説要約 20170910

・電気自動車時代の足音が近づいてきた

<要約>

 電気自動車(EV)シフトの動きが世界的に高まっており、メーカーや各国政府含めEVの普及に熱心だ。自動車は日本の基幹産業の1つである。この流れを好機ととらえ、変化を先取りしたい。

 ただ、電池の性能向上や金属資源などの問題があり、EV化の流れはゆっくり進むとみられている。さらに「脱エンジン」の加速で、それに関わる多くの雇用に影響が出る。       

 こうした負の側面の一方で、EVに使われる分野の需要は広がるだろう。又、EVは自動運転技術との相性も良く、排ガスもゼロになる。

 EV時代の足跡を、冷静に前向きに受け止めたい。
(本文910字➡要約240字)

 

カタール危機打開に役割示せ

<要約>

 サウジアラビアやエジプトなどの国々が、カタールとの国交を断絶して3カ月が経過したが、収拾の糸口が見えない。原油地帯であるペルシャ湾の不安定化は世界経済に重大な影響を及ぼす。これらの国々と良好な関係にある日本は、危機の打開へ積極的な役割を果たしていくべきだ。

 日本はエネルギー関連でカタールやサウジと深い関わりがある。緊張が武力衝突に発達すれば、エネルギー供給が滞る事態にもなりかねない。河野外相は中東の国を訪れるなど適切な対応をしている。
 カタール問題ではクウェートなどが仲介に動いているが、うまくいっていない。日本も仲介の列に加わり、当事国に対話を促していくことが重要だ。そして、解決を求める国際社会の声を大きくしていかなければならない。
(本文770字➡要約320字)

日本経済新聞 社説要約 20170909

・公務員の定年延長には十分な議論が要る

<要約>
 安倍内閣は公務員の定年をいまの60歳から65歳に引き上げる方針だ。総人件費が膨らむ可能性があり、まず民間で定着している役職定年の導入などに取り組むべきである。
 定年引き上げの理由として、現在の公務員の定年は原則60歳となっており、年金支給開始年齢が65歳になったことで生活の不安を訴える人が多いからだそうだ。しかし、現在でも再任用制度があり定年延長へ急いで移行する必要は無いように思える。さらに民間と違い、公務員の給与体系は一度上がった給与は減らずかつ役職定年が無いため、一度たどり着いたポストの給与が定年まで続く。又、年金についても今だに格差が残っている。
 こうした課題をまず解決すべきだ。

(本文900字➡要約290字)

 

北方領土交渉に寄与するか

<要約>
 安倍晋三首がロシアのプーチン大統領ウラジオストクで会談し、北方四島での共同経済活動について、5項目を優先事業とすることで同意した。
 日ロは一応、共同経済活動は領土問題を含めた平和条約締結に向けた取り組みとの認識では一致する。しかしロシア側は、事業に対する法制度の主張や北方領土への経済特区の設置など、日ロの共同経済活動に水を差すような対応をしている。
 日本は優先事業の協議を慎重に進め、さらに共同経済活動ばかりに注力せず平和条約問題を正面から話し合う枠組みを求めていくべきではないか。

 だが、北方領土問題だけでなく北朝鮮問題の対応を見ても、日ロの溝はなお深い。

 

(本文780字➡要約270字)

 

日本経済新聞 社説要約 20170907

・中ロは北朝鮮制裁で石油禁輸に賛成を

<要約>
 中国福建省アモイで行われたBRICS(ブラジル・ロシア・インド・中国・南アフリカ)首脳会議の最大の話題は開幕当日、北朝鮮が実施した核実験だった。挑発が先鋭化し極めて危険な状態にも関わらず、アモイでの会談で中ロは深刻な懸念を示しただけであり、依然対話路線での解決を主張している。これまで中ロはアメリカへの対抗上、北朝鮮に石油などの物資を供給してきた。その後ろ盾があって北朝鮮は現在のような状態へとなった。
 そのため、まず両国が北朝鮮に石油輸出の停止という強力な圧力を加える責任がある。
 又、BRICS首脳会議のもう一つの話題として、中国とインドの関係が挙がった。両国は何度か国境で軍事衝突した歴史を持つ。両国の衝突はアジアの安定に影響するため、事態の収束を願う。
(本文900字➡要約320字)

 

・彼らは本当に不法移民なのか

<要約>
 トランプ政権は、子供のころにアメリカに不法入国した若者を強制送還せず、引き続き滞在を認める制度(DACA)を来年3月に廃止する。

 確かに、不法移民の中でも凶悪な犯罪者は厳しく取り締まるべきである。しかし、DACAが適用された若者の多くは、学校に通い地域と同化している。さらに、好調な経済を下支えする良質な不法移民を目の敵にするのは見当はずれも甚だしい。残り時間はわずかだが、適切な判断を行ってほしい。

(本文740字➡要約190字)

日本経済新聞 社説要約 20170906

金融庁の組織改革が迫る銀行の自立

 金融庁は、2018年に現行の検査局を廃止して監督局に統合する。業務の重点を「検査と処分」から「育成」へとシフトするのが狙いだ。
 そもそも金融庁は、バブル崩壊後に発足し(発足当時は金融監督庁)、検査局による金融機関への不良債権処理を強硬姿勢で行ってきた。
 その結果、健全性は向上したが、国際競争力や企業価値は停滞したままだ。
 麻生金融大臣は、これからは金融機関を育成していくと述べている。
 民間側も、金融庁の顔色をうかがっていた従来の姿勢を改め、自発性や発想力を高めるべきだ。
 とはいっても、監督・検査の重要性は変わらない。金融庁は新たなリスクへの目配りも徹底してほしい。
(本文920字➡要約280字)

 

廃炉工程の作成は現実直視で

 東京電力福島第一原子力発電所廃炉に向け、原子力損害賠償・廃炉等支援機構は新たなプランを発表した。最難関の溶炉燃料(デブリ)取り出しについて、状況に応じて柔軟に方法を見直すという現実的な提案をしている。一方、デブリの取り出し開始時期については予定通りとの見解を示した。
 スケジュールありきになるのではなく、現実を直視しその都度判断していくべきだ。
 又、今回の戦略プランでは廃炉の取り組み全体を適切に管理する「プロジェクトマネジメント」の重要性も強調した。

 廃炉を円滑に進めるためにも、これまで十分だったとはいえないマネジメントのあり方を改めて考えるべきだろう。
(本文760字➡要約280字)